シェフであり続ける、、ということ

元ナースがシドニーでシェフの勉強中。きっかけはいつもテキトー、でも中途半端は大キライ。どうせやるなら・・!

超繊細なゼラチン

地獄の一日。。

先週の土曜日にダクト(換気扇)が壊れたんです。キッチン室温60℃以上。扇風機つけてみたけど熱風~その日に限ってシドニー33℃。エアコン入れても意味な~い

週末だから修理屋さんがなかなか見つからないし、やっと来てくれたけどその日は直せないんだと。どんなバツゲームですか、、、

ランチ営業前はまだ冗談が言えたけど、ランチが終わる頃には真剣に扇風機の置き場を考え、でもディナーの時には皆すでに限界。。終始無言。一人がミスると殺意さえ感じるこの空間、オーダーがピークに達した時には温度計が70℃超え

サウナですか!?いえいえ、洗浄機や湯からの蒸気でミストサウナです。

 

そもそも夏の間はキッチン内が普段から暑い。裏のドアを開けていても風が入って来るわけでもないし、その前に開けっ放しだとエアコンが効かないからとマネージャーがすぐに閉めてしまう。。鬼。。

 

こんだけ暑いキッチンでデザートを仕込むのがめちゃくちゃ大変。私は今デザートの仕込み担当なんですがムースを作る時につかっているゼラチン。これが超センシティブで超厄介。

今回こいつを正しく理解していなかった為に失敗してしまいました。しかもあの地獄日に。

 

ゼラチンとは・・

これは牛や豚の骨・皮から抽出されたコラーゲン。料理に使われているけど飲み薬や湿布、木材の接着剤にといろいろな所で活躍している。

日本料理では寒天やくず粉が使われていたことからゼラチンの普及はやや遅めだけど、欧食文化がとりいれられた頃から食品に使われるようになったそうです。

ゼラチンと温度

ゼラチンを含んだ液体は冷やすとゲル化し、温度を上げると再び元の水溶液になります(ゾルゲル変化)。ゼラチンはこの変化が比較的簡単。

ゲル化する温度(凝固点)は一般的に20~28℃

ゲルが解ける温度(融点)は同じゼラチンではたった5℃高いだけなんです。

なのでデザートムースを常温に5分でも出しておくとすぐにドロドロに。。。

また、凝固点に約8℃の差があるのは粘度やゼリー強度の差であり、強度が高いほど凝固点温度上がります。

でも融点はゼラチンの濃度に殆ど左右されないんだけど、その代わりショ糖なんかの糖分が入ると変わってしまうんです。

保水力

ゼラチンは親水性が実に高くて且つ保水力が高い。粉末のはすぐに湿気てしまうし、板状のは水につけるとものすごい膨らむ。ゼラチンを含む湿布薬も水に浸しておくと巨大化するでしょ?それはこのためです。

料理に使う時には水に浸して使うが、暑い環境の中で使用する場合は氷水にしてさらに使う直前まで冷蔵庫に保管しておかないと水に溶け出してしまい、分量が変わってしまうことで出来上がりに影響してしまう。

 ゼラチンのライバル

このゼラチンは苦手な相手がいる。パイナップル、パパイヤ、キウイ、いちぢく等に含まれるたんぱく質分解酵素(プロテアーゼ)。もしこれらのフルーツを使いたかったら一度熱を加えることでこの酵素を分解するか、すでに加工されているシロップ漬けを使うと良い。

この他、納豆菌や麹にも含まれている。よく肉をパイナップルに漬けると軟らかくなるって言うでしょ?あれはパイナップルのこの酵素が肉のたんぱく質を分解するからなんです。

失敗の原因

じゃあ、何で今回自分はムースを失敗したか。

それは温度です。

一度ゲル化したゼラチンは溶解するとゲル化力がなくなってしまいます。

ゼラチンを入れた液体は氷水で冷やし固まり始めたと同時にその凝固過程を止めてしまっては、ゼラチンそのものの働きがストップしてしまいます。

今回、仕込み途中でオーダーが入ってしまいゼラチンを入れた液体を常温にしばらく置いてしまったので、暑いキッチンの中ということもあり温度が数度上がってしまった結果、ゲル化力がなくなってしまいしっぱ~い!

 

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何事も失敗には原因があります。そこで原因とともに相手のことを知ればもっと自分の中での創造力が広がる。そう信じてこの3年間、見たものは全てノートへ・・そのノートも5冊目。競泳時代に毎日日誌を書いてその結果が全国6位だったことから、日誌って面倒くさいけど結果に繋がるとあの時学んだ。

そして、こうやって誰かに教えることで頭だけでなく身体でも記憶できる。

 

仕事に本気、遊びに本気、生きるのに超本気!